吉宗評判記 暴れん坊将軍
1978年~2002年

第二話はあの有名な小石川療養所の設立です。
「大岡越前」でもよく出てきますよね。
あっちは忠助と伊織の友情がカッコ良くて大好きでした。
今回の見どころは吉宗の若さあふれる眩しいハンケツです。

吉宗評判記 暴れん坊将軍 第一部 傑作選(1) [DVD]

第二話 素晴らしき藪医者

 オープニングクレジット
徳川吉宗:松平健
山下幸内:浜畑賢吉
大岡忠相:横内正
おさい:春川ますみ
おその:夏樹陽子 / おまち:岐邑美沙子
藪田助八:宮内洋 / 源三:園田裕久
ナレーター:若山弦蔵 / 常:阿波地大輔 / 鉄:井上茂
加納五郎左衛門:有島一郎
辰五郎:北島三郎


お城のお池では褌姿の男たちがなにやらジャブジャブしています。
なんと吉宗までもが褌一丁とはいいませんが、あられもない格好で網を担いでいたり。
眩しい上様のハンケツと太腿……。
どうやら池の鯉をとっているらしいのですが、大漁大漁と嬉しそうにはしゃぐ吉宗にじいがびっくりして飛んできます。

「これで美味い鯉こくが食べられるぞ」
「この鯉は食事に供するために飼っているのではありませんぞ」

とじいは言うのですが。
鯉が増えすぎては池の水が汚れる、ある程度の数にしておかなければ鯉はみんな死んでしまうぞ。
だったら食べてしまった方が経費の節約にもなる。
と吉宗のもっともなご意見。
でも水を浴びて風邪をひいては大変です、と言うじいの言葉を笑い飛ばそうとする吉宗ですが……。

「ん、ん……? はっくしょん!」

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(ナレーション)
『将軍家筆頭御典医、桜井玄石。
当時の医者では最高の位を極めたこの男は、同時に江戸の町医者仲間に君臨する政治的手腕の持ち主でもあった。』

くしゃみをした吉宗を心配してじいが御典医を呼んだようです。
まずは脈を取る糸を取り出した桜井玄石ですが、そんなもの使わずに直接取ればいいとの吉宗のお言葉。
当時は糸脈を使っていたのですね。
天下様に直接触るのは恐れ多いってことで、手首に糸を巻いて、その糸から伝わってくる振動で脈を取ったというのですが……ほんとかなぁ(笑)。

世間では流行り風邪のせいでこの一月に二千人が命を落としたと聞いて驚く吉宗。
玄石からは、脈は正常だけど念のため二、三日の静養をした方がいいと言われてしまいました。
くしゃみ一つで将軍様も大変です。

でも町人達が流行り病で苦しんでいるというのに、静養なんてしている吉宗ではありません。
さっそくお庭番たちとお堀の出入り口から船に乗って夜の町へと出ていきます。

町でさっそく会ったのは鳶辰一家の源さん。
辰五郎が世話になった人が流行り病で亡くなったとのこと。
新さんが家に行ってみると辰五郎を始めおさいやおまちも来ていました。
「どうして医者にかからなかったんだ」
という新さんにおさいは呆れて言います。
「馬鹿だね、お医者にかかるにはお金がいるんだよ」
どうやら治療代は非常に高く、しかも最近はどんどん値上がりするばかりとか。
町医者の中には金持ちに目をつけてゆすりたかりのようなことをする者もいるらしい。

源さんの話では小川笙船(しょうせん)という町医者に20両巻き上げられた商家もあるとか。
新さん、これは放っておけません。
さっそく小川笙船を訪ねてみると、笙船は薬草畑にいると聞きます。

薬草畑に行ってみると、いきなり鎌が飛んできました。
怒る新さんですが、やってきた男は「せっかく出た薬草の芽を踏まれてはたまらん」と、こちらもかなり不機嫌。
新さん、芽を踏んじゃダメだよね。

この男、小川笙船。
自分が世間から藪医者、ゆすりたかりと言われているのを承知しているようです。
新さんはいずれお前の悪行を暴いてやる、と言うのですが、そこに少年が慌ててやってきます。
「人足口入れの巴屋の連中がやってくるんだ。気を付けてね」
それを聞いた笙船は新さんを残して行ってしまいました。

さて。
大の大人が十人ほど連れ立ってやってきます。
中には用心棒らしき悪人面も。
笙船を息子の仇と狙って敵討ちに来たようですが、笙船が罪を認めて番屋に行けば命だけは助けてやるとか。
当然断る笙船に大勢が斬りかかるところを、やっぱり新さんが助太刀に入ってきました。
余計なおせっかいだ、と言う笙船に仇と言われる訳を聞こうとしますが教えてくれません。

新さんが一人取り残されていると
「どうやら相手の方が役者が上だな」
出てきたのは深編笠の山下幸内でした。
どうにも得体のしれない新さんに興味を持って後をつけていたらしいです。
二人で仲良く酒を酌み交わしたりしちゃいました。

助八に小川笙船を見張るよう命じて新さんは辰五郎の家に向かいます。

その頃、さっきの口入屋、巴屋が桜井玄石のお屋敷にやってきました。
あからさまに怪しいです。
どうやら桜井玄石は小川笙船を消したいらしく
「あやつがいると同業者が迷惑するのだ」と言っています。
刀ではなく弱みを握って潰そうと画策する玄石と巴屋。

笙船はとある商人の所に行って抜け荷をした主を脅し治療費に50両上乗せを要求します。
その様子を屋根裏では助八がばっちり見ていました。
同時に笙船の後をつけていた巴屋の手下は、事情を知っているらしい番頭を店先で捕まえてきて痛めつけ、笙船が何をしにきたかを聞き出そうとします。

辰五郎の家で寝泊まりする新さん。
「お前の家はずいぶん便利にできているんだなあ」
「は?」
「第一に厠と洗面所が隣り合わせだし、第二に寝間と座敷が同じ部屋だ」
何をするにも長い廊下を歩く城中よりよっぽどお気に召したご様子。
辰五郎も苦笑するばかり。
そこに助八から笙船のゆすりの件の報告が入ります。
それを聞いた新さん、さっそく辰五郎の家を出ていきますが、表で山下幸内に会い話を聞いてくれと言われました。

幸内の話によると、笙船は金のない貧乏人には無料で治療をしてやっているというのです。
巴屋が息子の仇と狙うのも言いがかりで、博打で喧嘩になって腹を刺されて、笙船が呼ばれて行った時にはもう出血多量で手遅れだったらしいとか。
それを確かめに笙船の診療所へ行ってみると、確かに笙船はタダで治療をしたり薬を渡したりしていました。
笙船と目が合って、ちょっとバツの悪そうな新さん。
するとそこに急患が運ばれてきました。
どうやら内臓破裂で手術が始まるらしく、新さんもお手伝いすることになりました。
白いエプロン(?)の新さん、可愛いです。

一方、巴屋につかまった番頭さんは拷問に耐えられず笙船が50両のゆすりをしていることを話してしまいます。
しかも殺されてしまいました。
ひでぇ……。

無事に手術の終わった笙船と新さんは仲良くお酒を飲んでいます。
笙船が金持ちからお金を取っていたのは貧乏人のためでした。
善と悪の判断は難しいと笙船は言います。
薬草園で育てている阿片は病人の苦痛を和らげる薬になる一方、人を廃人にしてしまうこともある。
自分のしていることも、いつどんな裏目に出るか分からない、と。

その言葉通り、なんとお役人が笙船を捕まえにやってきました。
あー、ゆすりがバレたかと思ったら、なんと脅していた商人の殺害犯にされています。
え、いつの間に主人殺されたの?

笙船が召し取られた直後、南町奉行所では騒ぎが起こっていました。
何事だと部屋から顔を出した大岡忠助に、お奉行に会わせろと門の前で座り込んでいる男がいるとの報告。
察した忠助が男を連れてこさせると、やっぱり上様でした。
忠助も苦笑です。

掴まった笙船の容疑を詳しく聞いてみると。
脅されていた主人が50両出すのを断るために薬草園に行き、断られたことに腹を立てた笙船が鎌で主人を刺したとのこと。
刺された後も息のあった主人から、たまたまそこを通りかかった人が訳を聞いたというのです。
その証人は巴屋の奉公人。
新さんも巴屋と聞いて怪しんでいます。
しかもどういうわけか、笙船は無実を訴えることもしないで黙っているとか。

なんとか忠助に頼み込んで笙船と話をさせてもらう新さん。
なぜ黙っているのかと聞くと、殺人はしていないけどゆすっていたのは事実。
まあ、そう言ってもお上は聞いてくれないだろうと。

それよりも町奉行を意のままにできるとは一体何者?
公儀の重い役、いや、それ以上の……。

そんな笙船の言葉に新さんは例の「貧乏旗本の三男坊」と言いますが、どうやら笙船は察してしまった様子。
それでも知らないふりをして新さんにお願いします。
「金がなくて治療を受けられない人のために無料で治療のできる施設が必要だ。
公儀を支えてきたのは町民だ、それくらいの見返りがあっても当然だ」
隣の部屋で立ち聞きしていた忠助も神妙な顔つきになっていました。

幸内と酒を飲みながら笙船の無実と巴屋の陰謀を語る新さん。
これは黒幕がいるなと。
そしてぽーんと一両も置いて出ていくしんさんに
「わからんやつだ」
という幸内でした。

店を出たところでお庭番のおそのから巴屋が桜井玄石の所へ行ったと聞く新さん。

桜井玄石のお屋敷では巴屋が大金をもらっているところでした。
病人を無料でみる笙船が邪魔だったんですね。
「医者は人の命を扱うもの、その気になればいくらでも搾り取れる。笙船を消すのはいわば医者全体の利益を守るためだ」
これはさすが、と巴屋が高笑いしていると。

障子の向こうに黒頭巾の男が。
「なにやつじゃ!」
「訳あって名乗ることはできん。だが法外に高い治療代に泣く町民の味方とだけは言っておこう。
桜井玄石、医者にあるまじき貴様の所業。とくと見届けたぞ!」

助八、おそのが混じっての乱闘が始まります。
でもここで正体を晒すことはしません。
適当に戦ったところで新さんは退場。

後日、お城では。
「そちのおかげで予の病も完治した。礼を言っておく」
吉宗にそう言われてご満悦の桜井玄石。
「ところで、予の治療代はいくらだ?」
と聞かれて滅相もございません、と言う玄石ですが。

「おかしいな。医者は人の命を扱うもの、その気になればいくらでも搾り取れると言った医者の言葉とも思えん」
焦る玄石。
御簾を上げると……
昨夜の黒覆面の男がいるではありませんか。
思わず頬がぴくぴくしちゃう玄石。
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吉宗はじいに後を任せると言って出て行ってしまい、桜井玄石はその日のうちに自害となりました。

辰五郎の家ではおさいとおまちが将軍様が無料の養生所を作ってくれると大騒ぎ。
「さすが俺の見込んだ男、今度会ったら褒めてやんなきゃ」
という辰五郎は、また夢見てるよとあしらわれてしまいます。
でも嬉しそう。

(ナレーション)
『小川笙船の建言により吉宗が設立した小石川養生所、すなわち無料診療所は江戸市中の貧窮孤独な病人を救済する施設として後世にまで名を残している。
その最盛期における常任医師二十二、通院患者は日に九百人。
初代責任者として小川笙船が任命されたのは言うまでもない。』

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今日もお城から町を見下ろしてにっこりする上様でした。

 
エンドクレジット
小川笙船:天知茂
巴屋:藤岡重慶
予之吉:宮口二郎
桜井玄石:南原宏治


第二話は小石川療養所のお話でした。
第三話はいよいよ「め組」の誕生です!
 

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