齢47にして去年、初めて江戸川乱歩を読みました。
「孤島の鬼」とその舞台作品DVDをご紹介。
なぜこれまで読んでいなかったのかと大後悔です。

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江戸川乱歩「孤島の鬼」
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15年7月10日にリブレ出版から発売されたものです。
実は私にとっての初乱歩。

小学校の時、図書室にあった子供向けルパンシリーズにハマって以来、中高はドイル、クリスティ、ルブラン、横溝と探偵ものをメインにミステリーばかり読んでいました。
でもどういうわけか乱歩には手を出さなかった。
なんでだろう?
高校の友人が乱歩好きでいろいろ話を聞いたような気はしたけど、やっぱり読もうとは思わなかった。

作品タイトルはいろいろと知っていましたが。
イメージ的には(読んでいなかったのでホントにイメージだけですが)、乱歩は退廃的というか耽美っぽいというか、そんな気がしていました。
どうしてそう思っちゃったのか分からないのですが。
高校では小説JUNEを愛読していたので、耽美大好きなはずだったんですけどね。

読んでいないので映像も実はちゃんと見たことありません。
けっこうドラマなんかにもなっていると思うのですが。

そんな私がなぜ今さら乱歩かといえば。
まあ、最初に上げた表紙の通りです。
あの表紙に惹かれました……はい。
描いておられる方のファンなのです。
それだけ(笑)。

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けっこうね、表紙に惹かれること多いです。

2008年に集英社文庫がやった有名漫画家さんたちと文学のコラボの時も、どれも既に持っているのに表紙に惹かれて買ってしまったとかね。
せっかくなのでお披露目w

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最近はもう出たのかこれから出るのか、また某アニメのキャラを使っての本があるらしいですね。
んー、2話までは「ふーん」といった感じで見たのですが3話で「ムリっ」と思って見るのやめました。
3話までしか見てないからアレだけど、全然文学とも本とも関係なさそうだし芥川のキャラもいろいろアレだし……。

ついでに言うと、上記の集英社文庫とタイアップ的に出たアニメシリーズはよかった。
「人間失格」が特に好き!
これもまたそのうち書こうかなと思っていますが。

さて、話を戻して。
注文して本が届いた夜に読み始め午前3時頃まで、そして翌日は休みだったのでひたすら読み午後あたりに読み終わりました。

道雄、切ない……(;_:)

冒頭に彼が最期まで主人公の名前を呼んでいたとあったのだから、彼が死んでしまうのは分かっていたはずなのに、実はすっかりそんなこと忘れていたものですから。
最後の最後に道雄が故郷で亡くなってしまったと読んだ瞬間、一気に気持ちが落とされたというか……結局かけらも報われないままだったんでしょうかね。

ふと気づいたのですが、最後の方は語り部分でも「道雄」と呼んでいましたね。
会話では「道雄さん」でしたが、語りでは「諸戸」だったので。
あれ?
と思ってどこから道雄呼びになったのかなと遡って探してみたら、樋口家の歴史が簡単にまとめられたところを境にしていました。
ああ、そうか。
もう「諸戸道雄」でないことははっきりしたけど正式な名字が分からないってことで「道雄」になっているのでしょうか。
あれ?
道雄は本名だっけ?

読み始めた最初は殺人事件がメインでした。
密室と人の多い浜辺という正反対の中で、どうやって殺人をしたのかっていうのが気になって。
でもわりとあっさり犯人が分かってしまい、しかもまだ全体の半分もいっていないのにこの先どんなふうに話が展開していくんだろうとドキドキ。
初代が覚えているという景色の場所にいずれ行くんだろうなとか、きっとそこでとんでもなくおどろおどろしいことが起こってるんだろうなとか、けっこう先を楽しみに読んでいました。

読んでる途中も殺人の実行犯が予想外の子供だったのはドイルの「四つの署名」のトンガを、双生児と洞窟は横溝正史の「悪霊島」と「八墓村」を思い出しちゃいました。
太郎丸と次郎丸……映画の岩下志麻が綺麗で怖かったよ。
作中でも言ってたけど、六つのナポレオンとかもね。

しかし肝心なことを言わないまま殺されてしまった深山木。
こういうの焦れったいよね。
じゃあ今度会った時に話そうなんて、もうフラグでしかないから。
大事なことはすぐに言おうね。

最初に蓑浦の頭髪が白い、そして奥さんの腿のところにある大きな傷跡のことが書いてあったけど。
双生児の秀ちゃんと会った蓑浦が彼女に一目惚れしたってところで、ああ、この子と結婚するんだな。
で、双生児の切り離しをしたのが道雄なんだろうな、って思ってつい「あぁ……」と声が出てしまいました。
道雄、切ないな……。

最初はちょっと怪しいなと思っていた諸戸道雄。
途中からはすごく頼もしい人と分かって大好きになっていたんですけどね。
蓑浦も道雄の気持ちを知っていてそれに戸惑いつつも、ちょっと甘えてみたり、それが相手にどんな思いをさせるのかもちゃんと分かってるよね。
フォロワーさんが「小悪魔」と言っていたけど、まさにそんなところは小悪魔です。

洞窟で死を覚悟した時、キスくらいさせてやれよとか思ったけど全力で拒否ってましたね。
道雄ぉ……。

でもそんな道雄の報われないところにほだされてしまうんですよ。
道雄の人生ってなんだったんだろう。
彼の死後、蓑浦はどんな時に道雄のことを思い出すのかな。

読み終わってみると人間関係できすぎじゃね?
って思うところもあったけど、でも最後まで一気によんじゃいましたね。
面白かった^^
というよりは、切なかった……道雄ぉ……(;_:)

そういえば当時見たアマゾンのランキング。
BL部門で1位になってましたけど……BL部門なのか?
まあ同性愛扱ってますし、表紙描いてる方もそういうの描いてますけど。
BLって言われると抵抗感じるな。

全く関係ない余談ですが。
そのランキングを見てなんというか、どうしてBL小説の表紙ってああも買いづらい表紙なのでしょうか(笑)。
いわゆるBL小説を買うことってまずないのですが、一度だけ勇気を出して「世界一初恋」の小説を買ったのです……ほんと恥ずかしかった。
BL小説と表紙&挿絵って切っても切り離せないんでしょうかね、やっぱり。
私としては挿絵はなくても全然かまわないし(どちらかといえばない方がいい)、表紙ももっと買いやすいものにしたら買う人も増えるのでは? なんて思うのですが。
年のせいですかねーw
まあ、通販あるから本屋で買う必要もないのだけど。
でもやっぱり本屋で買えるものは本屋で買いたいのです。

このリブレ出版はシリーズで全3冊。
2巻は
人間椅子、D坂の殺人事件、屋根裏の散歩者、押絵と旅する男、鏡地獄、パノラマ島奇談
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3巻は
芋虫、踊る一寸法師、虫、盲獣
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どれもすごかったですね。
なぜ今まで江戸川乱歩を読まなかったのかと。
怪人二十面相も読んでみようかな。
ちなみに明智小五郎が初登場したのが「D坂の殺人事件」なのだそうですね。

そしてそして。
これを原作とする舞台「孤島の鬼」が2015年4月~5月に上演されていました。
ああああ、もう少し早く原作を読んでいれば絶対見に行ったのに。
残念。
再演を期待していたところ、先週あたりだったかな。
DMM配信に舞台「孤島の鬼」があることに気付いてさっそく見てみました。

すごいいいいいいい。

ああ、実際に見たかった。
再演熱望。
配信を見終わった直後、DVDをポチってしまいました。

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DVDには特典映像として出演者の座談会なども入っています。
演者たちの好きなシーンとか聞くと面白いですね。

原作でもいろいろと胸を痛めるシーンが多かったのですが、舞台になるとさらに胸が締め付けられました。
目で見て声を聴くというのはすごいですね。
そもそもこの原作をどうやって舞台にするんだろうと思うじゃないですか。
海、島、洞窟……。
でも舞台変換は一切なし。
棚に実験道具が並んでいるような舞台が職場になり海になり洞窟になり。
照明や効果音、演技によって本当にそこが海だったり洞窟になったりするのです。
すごい……。
特に照明がものすごくよかったです。
美しかった。

ストーリーは原作通りなので読んでいる人は十分理解できると思いますが、さすがにちょっと端折っている部分もあるので原作を知らないで初見の場合は「?」と思うところもあるかな?

もうあちこちに好きなシーンがあって。
冒頭、道雄の蓑浦への恋愛感情を説明するシーン。
「気味は美しい」「あつい手だね」のセリフがドキッとします、ものすごく艶っぽくて。
それに続く「どうか僕から逃げないでくれたまえ」と切々と訴えるところ!
読むだけでも切なかったのに、舞台での二人のセリフの掛け合いの中でそこが語られるのですが。
本当によかった。
小説のセリフとほとんど一緒なんですよね。
この後もそうですけど、かなり同じです。
ああ、このキャストでドラマCDとかやってくれないかなって思ってしまう。
ビーカー(?)を間にして触れそうで触れない二人の指先とかね、うわぁあああって感じです。

蓑浦と道雄のシーンはホントどれもよかった。
蓑浦を抱きしめたときに背中で微妙に動く指先とか、洞窟で死を覚悟したときの迫りっぷりとか。
一番辛かったのは、蓑浦が秀ちゃんときっちゃんを切り離せるのかと聞いたとき。
それができるっていうことがどういうことなのか、聞いてやるなよ蓑浦……。
それに対して苦しそうにできると答える道雄がね……この舞台の中で一番辛かった。
そしてラストの道雄の死を表現するシーン。
綺麗だった。
座談会でも言ってたけど、綺麗だったよね。

ああ、再演されたら絶対見に行くのですが。
ないかな?

今年いっぱいはDMM配信をしているようなので、気になる方はぜひぜひ!


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